Sentimental Scenery "Soundscape"を聴く

 GWにひさびさに韓国に旅行して、向こうのCDを何枚か買って来ました。

 そのうちの当たりが、この Sentimental Scenery "Soundscape"です。
 私は、このSentimental Sceneryというグループ(?)のことはまったく知りませんでした。CD屋さんの視聴コーナーに置いてあったということは、韓国では、いま人気のアーティストなのでしょう。


 聞いてみると、結構心地よく、週末の夜のBGMとして愛聴しています。
 曲調は、美しくわかりやすいキラキラしたメロディーを淡々としたハウス調の電子ビートに乗せた感じでしょうか。私のように、すっかり音楽のトレンドから外れてしまった年齢層にとってもわかりやすく、かといってアレンジはキチンと今風で、実にツボを押さえて創られた曲だなと思います。
 私がどっぷりと漬かっていた20年前の韓国の音楽とくらべれば、今の韓国の音楽はすっかり国籍を感じさせなくなってしまいました。肩ひじ張らずとも、自然体のままで世界と同期した音楽シーンがそこにはあります。


 1曲目の "Spring Breeze" は、アルバムの1曲目にふさわしい、さわやかで広がりのある曲です。
 feat. Mizuno Mari of Paris Match とありますので、ボーカルは日本人のようです。
 私は、ミズノ マリさんも知りませんし、Paris Matchと聞けば思い出すのは、スタイルカウンシルの Cafe Blueです。 
ミズノさんは、もう1曲 Moonlightという曲でもフィーチャリングされていますが、独特の透明感のある声で、かなりいい感じを出しています。
 "Spring Breeze" http://youtu.be/hjdp958ojwE    



 5曲目のアルバムタイトル曲 "Soundscape"は泣かせます。
 メロディーを奏でるのは、(たぶん)胡弓。
 最初は、音も薄くて、室内楽的でかなりダルイ感じでスタートしますが、中盤から、8分音符でひたすらあおり続けるベースやバタバタしたドラム、ピアノにストリングスまで入ってくると、俄然盛り上がっていきます。
 胡弓を電子リズムの上に乗せると、下手すると「女子12楽坊」になってしまうのですが、ここではまったく違う世界をつくっています。胡弓と言うのは、人間のすすり泣きのような声までを表現してしまう実に表現力の強い楽器だと思います。デジタルとは対極的にある楽器を持ってきたところが面白いところでしょう。

 "Soundscape" http://youtu.be/0NuNwa7NN2A   



Youtubeで検索してみると、この Sentimental Sceneryの曲は結構たくさんアップされています。以前のアルバムの曲のようですが、こちらの曲もよくできています。

 "Oriental Snow"  http://youtu.be/-Lz31iVrJ38 

 ベースラインがチャチだったり、サウンドは全体にやや薄っぺらい感じがしたりするのですが、全体の構成やメロディーは、実にツボを押さえています。



 おそらく、彼らの音楽は、日本のアーティストにとっては、若干細部の作りこみが甘い、という印象を持たれるかも知れません。
 しかし、彼らの音楽の良さはそうしたDETAILよりも、ポップでわかりやすい、曲の全体構成やアレンジです。一部の音楽マニアに認められるより、多くの大衆の心をひきつけるための、最大公約数を満足することを優先した曲づくり。


 これは、ビジネスの世界と同じです。

 日本のメーカーが細部の作りこみに気を抜くことなく、マニア受けする商品をつくっているうちに、韓国メーカーは、世の中にある既存商品をベースにしていいところを集めた、大衆受けする商品をスピーディーに作ってくる。しかもそうした商品は、新興国中心に、日本メーカーの商品よりも、その価値がわかりやすく評価されやすい。

 私が、韓国でCDを買ってくるのもまさにそのせいなのです。
 最先端の音楽には、すでについていけなくなった私でも、ハズレなしに、それなりに楽しめるイマ風の音楽。それが私にとっての韓国の音楽のポジショニングです。

 韓国のドラマや映画が受けるのも同じことでしょう。

 これには、細かいとこをあまり気にしないケンチャナヨ精神など、韓国の人たちの文化そのものが関係しています。

 すでに韓国と言う確固たる独自の存在が隣に存在している事実を踏まえたうえで、日本がこれからどんな独自のポジショニングを確保できるのか、そこを戦略的に意識しなければならない時代になっているのでしょう。