「いつまでも経済がわからない日本人」 三橋貴明著

 
 新刊本として本屋で平積みされていたのを見つけて買ってきました。
 三橋氏は、マクロ経済を、用語の解説から始まって、素人にもわかりやすく説明してくれます。特に、B/SやP/Lなど企業財務の用語や考え方を使ってマクロ経済を説明してくれるので、学校で基本的な経済学を全く学んだことがなく、ビジネスで財務的な考えをかじっている私にとっては、非常にとっつきやすく感じます。


 三橋氏の本は、以前もこのブログで紹介したことがあります。数字の分析には感心するが、そこからの考察には感心しない、というのが、私の感想でした。
 http://d.hatena.ne.jp/santosh/20091011/1255286453
 
 
 この本では、今日本で注目を浴びている「財政再建」のための政策が、実は景気悪化を助長し、結果的に財政をますます悪化させてしまう、という事実をロジカルに説明していきます。


 日本経済の課題は、「民間需要」の不足にある。しかし、デフレギャップの中で民間主導での支出を期待できない以上、政府部門が負債と支出を増やし、GDPの「フロー」を拡大させるべき。

 民間が支出を削減させているときに、政府が「財政健全化」を叫び、公共投資を削減することは、ますます民間需要を縮小させ、デフレのスパイラルを拡大させてしまう。財政健全化のために緊縮財政を行うことは、GDPを縮小させ、反対に財政悪化(政府負債対GDP比率の上昇)という結果を招くことになる。

 政府が国債を発行しても、国債のほとんどが自国通貨建てで、その購入者の96%が国内である以上、日本国内で資産が移動するだけであり、ギリシャにように7割以上を外国からの資金を頼り、結果破綻した例とは根本的に異なる。国債の発行は「将来世代へのツケ送り」だと言われているが、ツケを払うのも、ツケを受け取るのも日本国民である以上、同じことである。むしろ、資金を投資・支出し、需要を増大させ、経済のフローを回転させることが、デフレ対策として必要。

 緊縮財政は、インフレ時にとるべき対策であり、デフレ時には、正反対の対策が必要。日本の多くの政治家や評論家は、この点で完全に間違っている。「ムダの削減」「補正予算凍結」「事業仕分け」− これらの需要抑制政策は、インフレ時にこそふさわしい政策であり、こうした政策が、むしろデフレを悪化させる結果につながっている。


 この本を読む限り、説明はロジカルですし、もっともに思えます。
 私は、マクロ経済についてはまったくの素人ですので、なるほど、ふむふむと読んだのですが、おそらく反論もあることでしょう。
 これからニュースやTVを見る時にも、この本で知った基礎知識があれば、より論点が理解できることと思います。
 1,500円という、この本の価格の価値はあると思います。


 ちなみに、三橋氏は、先日の選挙で、自民党から比例区に出馬し、落選されたそうです。ネットではカリスマ的な人気を誇っていますが、ネット上のカリスマでも、日本国レベルでの、マスでのパワーは、今のところはまだ限られていると言うことなのでしょう。