シャンゼリゼ通りのトヨタショールーム

1月1日元旦のシャンゼリゼ通りは、いつもながら人であふれていました。


トヨタショールームが開いていたので入ってみました。

入口にハイライトされて展示されていたのは、小型車「iQ」です。

なんと壁にも貼り付けられていました。


奥には、プリウスのカットアウトサンプルがあり、技術的なウンチクを説明していました。


また、2階のフロアはレース車展示コーナーになっており、「貴方のレースドライバー適性テスト」というゲームは、結構人気のようで、お客様が並んでいました。


 ちなみに、近くにあるルノーショールームはずっと来客が多く、あまりの人の多さに入るのを断念しました。



 ショールームを見ての印象は、フランスにおけるトヨタは、『ハイテクガゼット』のような位置づけを狙っているのかな、ということです。

 いろいろなアイデアが盛り込まれた超小型車「iQ」、独自ハイテク技術に支えられたエコカープリウス」、これらで代表されるイメージは、伝統やステイタス、安心感を重視する欧州ブランドとはまるで異なるポジショニングのものです。

 日本におけるトヨタは、フルラインアップですべてのカテゴリーををおさえる、まさに「王者の戦略」なわけですが、フランスでは、ニッチで尖がった路線を狙っているようです。

 高級車のカテゴリーは「レクサス」ブランドとしていることから、「レクサス」と「トヨタ」で、ブランドのポジショニングを明確に区別しなければならないという背景もあるのでしょう。
 実際には、どちらのブランドも十分に浸透しているとは言えないフランスでは、戦線が分散してしまい苦労していることと思われます。


トヨタが狙っているブランドの方向性については、私も、フランスで突破口を開くにはおそらくこれしかないのだろうな、と感じます。

 自動車というのは、まだ「機能価値」がかなり評価される商品だと思われます。家電で言うと、「マシーン」とみなされている洗濯機に近いイメージです。
 こうした商品のマーケティングでは、技術的に裏付けされた機能的な優位性、それに加えて商品の「信頼性」が重要になってきます。

 自動車の面白いところは、まだ購入金額が高いこともあり、そこにさらに「感性価値」が重く乗っかってくることです。
 欧州では特にこの部分は重要なのでしょう。
 しかし、伝統的に地場ブランドが顧客のマインドを絶対的に押さえている欧州では、「感性価値」のエリアで価値を付加していくには、商品の信頼性を打ち立てるよりも、もっと長い時間がかかる。
 よって、そこで真っ向から勝負しないポジショニングとして、「機能価値」主体でも成り立ちうる『ハイテクガゼット』という切り口が出てくるのでしょう。
 この切り口であれば、デジカメやムービーなど、日本ブランドが欧州で勝負出来ている例は数多くあります。


 また、もうひとつの切り口は何といっても「エコ」です。
 エコによって、あらゆる商品のマーケットは急速に変化している。
もしこのアリアで突出できれば、過去に築かれてきた欧州ブランドの資産を一気にひっくり返せる可能性もあるでしょう。


 トヨタは今まで、F1に参戦することによって、商品のパフォーマンスを実証し、客観的に信頼性を高めようとしてきたことと思います。
 特に欧州のゲームであるF1に参加することは、トヨタが欧州メンバーの一員である、欧州人にとって安心してつきあえる「インサイダー」である、ということを伝えるには効果的でしょう。
 しかし、F1が与えるイメージは、エコの方向性とは合致してはいない。
 むしろF1のように自動車の強力なパフォーマンス面を訴求することは、エコの面ではネガティブなイメージを与えてしまう可能性もあるかも知れません。
 よって、F1をやめたことは正解ではないかと思います。
 本来、F1は「レクサス」ブランドで参戦すべきだったかも知れません。


 トヨタは、将来この切り口で成功できるのでしょうか。
 短期的に「機能価値」でどこまで勝負できるのか。
 あるいは欧州地場ブランドとは異なる、例えば若者向けの新たな「感性価値」を提案しようとしているのか。
 いずれにせよ、感性価値の構築にあたっては、レクサスブランドとの2戦線に戦力が分散してしまうことが痛いところだろうと思います。