"Gapminder"で統計データの物語を読む

昨日の続きです。
「プレゼンテーションzen デザイン」の本の中で、『データ表現の未来』というテーマで、"Gapminder" というソフトが紹介されていました。
 さまざまな統計数字を、バブルチャートグラフのアニメーションという形で直感的に見せることのできるソフトです。
 統計データに隠れているさまざまな「物語」が、このソフトによって、生き生きと現れてきます。
 YouTubeで、このソフトの開発者であるHans Rosling教授によるプレゼン映像をいくつも見ることができます。しゃべりは英語ですが、ネイティブの英語ではないので、非常にわかりやすいです。



 このソフトを実際にパソコンにダウンロードして走らせてみました。
ソフトのダウンロード先はこちらです。↓
 http://www.gapminder.org/desktop/

いろいろなデータが既にインストールされた状態で公開されているので、X軸とY軸を任意に組み合わせれば、統計データによるさまざまな事実をアニメーションで見ることができます。
 
 ここで「一人当たりGDP」と「携帯電話普及率」を組み合わせて見てみます。
 縦軸を「一人当たりGDP」、横軸を「携帯電話普及率」にします。
 いちおう200年前からのデータが入っているのですが、携帯電話が対象なので、世界的に普及率が上がってきたタイミングからスタートさせてみます。
 まずは、私が初めて携帯電話を買った1996年を見てみます。


 日本の携帯普及率は21%です。携帯電話が普及し始めているのは、GDPがトップレベルの国だけです。アジアでは、香港のみが22%と、日本を超えています。
 次に、2000年の状況を見てみます。

 普及率はかなり上がってきており、日本は53%です。アジアでは、香港(82%)、台湾(80%)、シンガポール(68%)、韓国(57%)とも、すでに日本を追い抜いています。
 ヨーロッパでは、イギリス(74%)、イタリア(73%)や北欧の普及率が高くなっています。
 基本的に、GDPと普及率が比例しており、グラフ上では一つのライン上に各国が位置づけられていることがわかります。
 これが2005年になるとどうなるでしょうか?

 ここで一気に普及率が上がってくるのは、GDPがトップレベルより少し下の国々です。日本が75%にとどまっているのに対して、ロシア(84%)、ハンガリー(92%)、チェコ(115%)、リトアニア(127%)などの東欧圏や、ポルトガル(109%)、ギリシャ(92%)、キプロス(94%)といった南欧圏が一気に伸びてきます。
 GDPと普及率の関係をあらわすラインは、傾きが小さくなり、GDPの高い国はとり残された形になっています。
 次に、2008年を見てみます。

 普及率が一気に伸びたのは、UAE(208%)、カタール(183%)、サウジアラビア(143%)などの中近東諸国、さらにブルガリア(140%)、ルーマニア(125%)Mウクライナ(121%)など、東欧でも発展の遅れた地域です。一方で、日本(86%)やアメリカ(88%)は、普及率が頭打ちになっています。
 GDPがトップレベルから少し下の国々がもっとも普及率が高くなっており、ここを頂点に、低GDP・低普及率の国へ直線のラインができています。GDPトップレベルの国々は完全にこのラインから取り残されています。
 このデータは何を語っているのでしょうか?
 固定電話網の普及が整っていなかった国ほど携帯電話が普及していったということなのでしょうか? ですがそれにしても普及率の高い国では、軒並み100%以上の普及率になっているということはどういうことなのでしょうか?  一人で2台以上の携帯を持つ事情があるのでしょうか?


 このソフトを使えば、データによって、いろいろな事実が一目瞭然にわかってきます。
 販売データや占有率、価格などのデータを自分で放り込めれば、ビジネスでも活用できる有効なツールになると思うのですが、それが可能なのかどうかはわかりません。
ちなみに、このソフトは2007年にGOOGLEに買収されているそうです。