久々に「戦場のメリークリスマス」を観る

 今日テレビでBSの映画チャネルをつけたら、大島渚氏の追悼で、「戦場のメリークリスマス」をやっていました。
 もともと観るつもりでもなかったのに、思わずそのまま最後まで観てしまいました。

 
 前回観たのは恐らく20年数年前だったと思いますので、もうずいぶんと昔のことですが、今回観ても当時の印象とは同じで、特別新たな発見があるわけではありませんでした。

 独特の不思議な世界観があるのですが、映画自体は、特別たいした作品だとは思えません。血沸き肉踊るスぺクタルシーンがあるわはないですし、感動のストーリーがあるわけでもない。戦争の狂気や理不尽さをテーマに語ろうとしてしているのであらば、それもまた突っ込みが中途半端な気がします。


 デビッドボウイや、坂本龍一ビートたけしといった思い切ったキャスティングの妙が、話題作となった理由でしょう。

 デビッドボウイは実に格好いい。当時は ちょうど"LET'S DANCE"が流行ったころで、MTVでずいぶんと彼のビデオを見たものでした。
 たけしは、俳優としてはまったく素人でありながら、屈託のない笑顔が実に印象的で、「ハラ軍曹」のキャラクターにびったりはまっています。
 坂本龍一の演技が、せりふも聞き取りにくく一番イマイチかと思いますが、日本軍の大尉なのに、なぜか80年代のテクノ風の化粧をしているのは、何とも不思議です。



 しかし何といっても、この映画を特別なものにしているのは、そのテーマ曲 "Merry Christmas Mr.Lawrence"でしょう。
当時はよくわかりませんでしたが、今この曲を聞くと、すごく日本を感じさせる音楽だったことに気が付きます。

和風のペンタトニックを中心にした、わらべ歌のようなシンプルなメロディー、それを包み込み西洋音楽のハーモニー、この世界観は坂本龍一独自のものです。
 最近でもときどきYOUTUBEで、この曲を聴くことがあります。


 日本人の私にとっては、日本の伝統的な「ヨナ抜き」の音階を使ったこの曲は自然になじめるのですが、全く違う音階をベースに育っている欧米人がこの曲を聞くとどう思うのか、には非常に興味があります。
 おそらく、同じ音を聴いていても、まるで違うとらえ方をされているのではないか、という気がします。

 私は、日本から、韓国・中国・ベトナム・タイくらいまでの東アジアエリアでは、音楽に関して非常に近い感覚があるなあと感じています。こぶしの効いた節回しや、多彩に展開するコード進行。醤油やニョクマムナンプラーの匂いを共通においしいと感じられるように、独特な匂いを自然に受け入れることができます。

 一方で、これが西欧になるとまるで違う音楽となり、私には実に味気なく聞こえてしまいます。UKの最近のロックなんか、コード進行が少なすぎて、まるで情緒を感じません。ドイツで食べるラーメンのような(ドイツにはMOSCH MOSCHというラーメンチェーンがある)、醤油やダシの効いていないスープを飲んでいるような感じです。酒の肴にスルメや柿の種を食べるのか、オリーブを食べるのか、という違いかもしれません。

 世界の音楽と食文化をくらべれば、地域的に、共通する線引きができるような気がしています。



以前、ドイツでタクシーに乗った時、私が日本から来たと言うと、運転手が、なぜか中島みゆきのCDをかけてくれたことがあります。その運転手はトルコ系だったのですが、彼曰く、彼はトルコ系なので日本の音楽のメロディーがなじむのだ、ということで、どこかで入手したCDを気に入ってそのまま聞いているそうです。

 そのあと、トルコに出張した際、TVでおじさんおばさん向けの大衆音楽番組をやっていたので、ずっと聞いていたのですが、日本の音楽とはかなり感覚が違うなあ、と感じました。ただし、西欧の音楽とは違う節回しと音階がありましたので、彼らは、東アジア圏と西欧圏の間にいるのかもしれません。 

 いつか世界の大衆音楽について、マップを描いてみたいものです。