「セブン・イレブンの仕事術 一兵卒のビジネス戦記」 岩本浩治著

 以前、京都駅南口 アバンティの本屋さんで、1/3ほど立ち読みしてそのままになっていたのですが、アマゾンで中古本を買って、今日の午後一気に読みました。 
 著者は、セブン・イレブンで、実際にOFC(オペレーションフィールドカウンセラー =経営指導・店舗運営管理)をやっていたそうです。はじめに、この本はフィクションだ、と言いきっていますが、内容はあまりに生々しいですし、限りなく実際の経験談をもとに書かれているのでしょう。

  一言で言って、どんどん引き込まれる感動を誘う内容で、涙なしには読めません。
 今日の午後、自分が、実際にセブン・イレブンで一仕事をしてきたような気になりました。

 
 あらためて、この本で書かれているセブン・イレブンのオペレーションについて考えてみると、代名詞になっている「単品管理」や「仮説・検証」、これらを本部が指示するのではなく、個別のお店の店長・パートまでが、自ら考えて行うよう仕向けている、という点が特長でしょう。

 本部部門で、過去の販売実績から機械的に販売予測をたてることはできます。
 しかし、実際にそれぞれのお店の販売を左右するファクターはあまりに多く、しかもそれらファクターは、常に変動し続けています。結局、現場の最前線にいる店長やパートが、そのお店のお客様を想定して、自ら考え仮説をたて、予測をし、それを販売実績で検証していく、ということをやり続けるしかないわけです。
 セブンイレブンは、鈴木会長以下、OFCまでこの思想を繰り返し説き続け、そのために必要なツール(POSシステムなど)や手法を進化させ、愚直に実践していくことで、圧倒的な競争力を築き上げたのでした。

 ちなみに、セブンイレブンは、中期経営計画などを策定しない、と聞いています。あくまで、スタート地点は、自社の都合ではなく「お客様」にあり、現場で課題を発見し解決していくことの繰り返し・積み重ねが成長につながっていく、という超現場志向が、思想の前提にあるのでしょう。

 これは、きわめて日本的な考え方だとも言えるのではないかと思います。
 本部スタッフが戦略を考え具体的な指示を行い、現場は執行のみを行う、というのが、アメリカ的な考え方だと思います。マクドナルドで見られるようなマニュアルによる管理が代表例です。そこには、現場が考え、判断し、物事をすすめていくことは期待されていません。日本のセブン・イレブンが、当初アメリカのサウスランド社から購入したフランチャイズのノウハウもそうだったようです。
 一方で、以前にも書きましたが、それぞれの現場が、自らその経営範囲内での判断を行い、自立して仕事を進めていくというのは、もともと日本では受け入れられやすいスタイルだと思います。
 切れ味の良い戦略性と総力戦が要求される現代の製造業においては、今まで成功の原動力になっていた現場の判断に頼った日本的なやり方が、むしろネックになってきているのですが、店舗のオペレーションという個別戦闘の世界では、これが、一番有効なやり方なのでしょう。

 こうしたセブンイレブンの勝ちパターンが、国民性の異なるアメリカの店舗や、ローカル資本と提携している台湾(統一企業)やタイ(CPグループ)でも、うまくまわっているのか、つまり、世界的に普遍的な経営手法にまでなりうるのか、については非常に興味があります。


 ちなみに、私は、セブンイレブンのお店はあまり好きではありません。同じコンビニであれば、ファミリーマートや、ローソンの方が好きです。
 なぜかというと、セブンイレブンの店には、面白みがないのです。いつも、定番の当り前のものしか売っていないという印象で、思わぬものを発見したりするわくわく感が、セブンイレブンにはなぜか全く感じられないのです。こう感じるのは私だけでしょうか?