日経ビジネスオンライン 「韓国企業に学ぶな!」 金美徳著

 日経ビジネスオンラインに、面白い記事がありました。

「コリアン・グローバル・カンパニー 〜韓国企業に学ぶな!」
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20100527/214640/

 タイトルを見ると、日本中、右も左も「韓国企業に学べ!」の大合唱になっている中で、あえて「学ぶな!」というアンチテーゼを打ち出しているかのようにに思えます。
 ところが、記事を読んでみると、タイトルをあえて目を引くものにしているだけで、韓国企業と日本企業の強さ・弱さを客観的な視点から認識しましょうという、いたって当たり前のアプローチによる内容でした。

 著者は、以下のいくつかの視点から韓国企業と日本企業を比較しています。今まで一般的によく言われてきている内容ですが、よく整理されていますので、下記に紹介します。


■経営スタイル
韓国企業:マーケットを重視する「マーケティング指向経営」。
日本企業:技術を重視する「モノ作り指向経営」。

■技術開発面
韓国企業:技術をどんどん買ってきて管理するものと考える「技術マネジメント(購入技術と自社開発技術の組み合わせ)」。
日本企業:技術の改善を繰り返して開発するものと考える「技術イノベーション(技術改善とすり合わせ)」。

■海外戦略面
韓国企業:現地ニーズにしたがって韓国モデルをどんどん修正する「現地化」。
日本企業:日本モデルをそのまま輸出する「日本化」。

■投資戦略面
韓国企業:「韓国内で稼いだ利益を海外につぎ込む投資パターン」。
日本企業:「海外で稼いだ利益を日本国内に再投資するパターン」。

■リーダーシップ面
韓国企業:「トップダウンによるスピード経営とリスクテイキング」。
日本企業:「優れたバランス感覚とリスク回避力」。

■人事戦略面
韓国企業:「過酷な徴兵経験や熾烈な学歴・就職競争を経て入社した社員に対するエリート教育や徹底した成果主義(成果には高額報酬、失敗時には解雇)により業績達成に対する責任感が強い」、「50代前半で実質的に定年となるため人件費のコスト競争力が高い」。
日本企業:「熟練人材を育成するため組織能力が高い」「経営責任が部署など組織的に追求されるためチームワーク力が強い」「定年が引き上げ傾向にあるため愛社精神が強い」。 


 著者は、「韓国企業の強みと日本企業の強みは、どちらも優れており、決して絶対的な優劣や勝敗がつけられるものでない。ただ市場の特性、時代ニーズ、タイミングによって一時的に優劣や勝敗に表れるのはやむをえない」とまとめています。

 また、その象徴的な例として、キムヨナ選手と浅田選手のオリンピックでの結果をあげています。
 キム選手は、トリプルアクセルは飛べないと早いうちに断念し、いわゆる「モノ作り」を諦めた。そしてカナダに移住し、オリンピック審査委員の好みや審査癖を徹底研究して演目を練るなど、いわゆる「現地化」を図った。
 一方、浅田真央は、最後の最後までトリプルアクセルにこだわった。すなわち「モノ作り」を追求したのである。

 私も、オリンピックのフィギュアスケートを見て、「キムヨナ選手のやり方っていうのは、典型的な韓国企業のやり方だよな」と思っていました。
 日本メーカーが、技術にこだわりながら現地の市場にフィットしない日本の商品を持ち込んで苦戦している間に、現地のルールやお客様に合わせて、お客様受けする商品を、効率的なやり方でつくる。そのために必要な技術やノウハウはお金を払って集めてくる。これはまさに韓国メーカーの勝ちパターンです。
 ビジネスでもスケートでも同じように見られる、日本にくらべると、ものごとの枝葉へのこだわりが少なく、大胆な動きに躊躇しない傾向。これは、企業だけではなく、韓国の国民性なのかも知れないな、と思いました。