リード・ヘイスティングス、エリン・メイヤー著 「No Rules」を読む

ちょうど1年前に読んだ本です。


Netflix創業社のリードヘイスティングと、エリンメイヤーの共著で、グローバルに急成長を遂げ躍進し続ける(僕もお世話になっている)Netflixが、試行錯誤しながら構築してきた独自の仕組みやカルチャーを紹介しています。
エリンメイヤーさんは、The culture map 「異文化理解力」というビジネス上でよく遭遇する文化の違いによる摩擦や誤解を切味良く分析・整理した楽しい本を書かれている方です。

Netflixは「自由と責任」をモットーに、世の中の多くの会社が目指しているやり方とはまるで違う(あるいは正反対な)アプローチで、素晴らしい業績を上げているそうです。例えば休暇や勤務の規定がない、出張旅費の規定も経費の承認プロセスもない。当然関係部署に合議を取っていく決裁のプロセスもない。業績評価の基本である目標管理制度もない。KPIもない。成果報酬型のインセンティブもない。そのかわり、業界のトップ人材を、業界トップレベルの待遇で雇用し、彼らに完全な裁量権を与える。パフォーマンスが並のレベルであれば十分な退職金を払って去ってもらう。これらは普通では考えられないやり方ですが、Netflixという会社の事業においては、ルーティンやオペレーションを間違いなく実行するよりも、優秀な少数のメンバーに彼らの創造性を最大限発揮させることが企業の価値の源泉になるという考えが背景にあります。これらは表面だけを見ると一見非常識なもののように思えますが、背景を知るとNETFLIX社の文脈の中では合理的な理由で作られてきたことがわかります。

ここで出てくる質問は、アメリカで出来てきたこうしたNetflix独自のやり方が、アメリカ以外の国で通用するのかどうか? そこへの答えが最終章にあり、各国でNetflixがどう自分達のカルチャーを適用させていっているのかが紹介されています。ここでなぜエリンメイヤーさんが著者だったのかがわかるわけです。

世の中全体の風潮としては、業績連動インセンティブ全盛の肉食の時代があり(中国のような国では今もこれが有効なようですが)、それに対し最近は若い世代中心にパーパスや理念や社会課題解決がモチベーションとなる風潮があり、右も左もそれになびいている感がありますが、Netflixはそれらには組せず自分達の独自の道を切り拓いているわけです。このやり方はNETFLIXの独自の文脈に結びついているので、仕組みだけを真似してもワークするものではないと思います。成功する会社にはやはり理由があるわけですね。