山口周著「世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?」を読む

 2年半前に読んだ本です。

 ブラジルにいる間は、時間があればできるだけブラジルの情報を摂取したいと思い、あまり日本の本は読まずポルトガル語の記事と格闘していたのですが、日本に帰ってきてからは心置きなく日本の本を読み漁っています。
 さて、この本、よく目にしていたものの、よくある流行を追った新書の類いかと思い注意していなかったのですが、読んでみてびっくり。日本にいなかったのはたった6年ほどでしたが、日々の仕事においても、ビジネスの世界ではずいぶんいろいろなことが変わったしまったな(自分がすっかり時代遅れになってしまった)ということを強く感じていたところだったのですが、この本には、ふだん漠然と感じていたことが明快に整理されて提示されている感じです(すべてを論理的に説明することは決してこの本の主題ではないとは思いますが)。

 論理思考の普及による「正解のコモディティ化」や「差別化の消失」、あるいは「全地球規模の自己実現欲求市場の誕生」や「システムの変化にルールが追いつかない社会」といった現在の世界で進行しつつある大きな変化により、これまでの世界で有効に機能してきた「客観的な外部のモノサシ」がむしろ経営のパフォーマンスを阻害する要因になってきている。世界のエリートが必死になって美意識を高めるための取り組みを行っているのは、このような世界において「より高品質の意思決定」を行うために「主観的な内部のモノサシ」を持つため -   

こう書くとエラク難解に思えますが、このテーマが判りやすいロジックの積み上げで説明されており、いろいろな社会の事象がこのストーリーのもとに整理されています。いろいろ整理がつかなかったことがこのストーリーでひとつにつながったような感じがしました。